1月29日に情報処理学会デジタルドキュメント研究会(SIGDD)が甲南大学であるというので、参加してきた。SIGDDは自分の興味に近い研究会で、以前から参加したかったのだが、なんせ地方大学の一教員が自由に使える旅費は少なく、DB系の学会に参加するだけで精一杯で、なかなか調整できなかった。今回は近場だし、HTML5のチュートリアルをして中核メンバーと知り合いになったので、行ってきた、というわけだ。
行ってよかったなあ、と思うのは、今まで名前だけ存じ上げていた方に懇親会の場で直接お話ができたことだった。
まず大野邦夫先生。SIGDDの予稿集で、XMLや日本語組版について何度も投稿されており、名前だけは存じ上げていたのだが、HTML5のチュートリアルは泣く泣くご欠席ということで、お会いする機会がなかった。今回自らご発表されていたのだけど、その中でCLOSなる言葉を使われていて、「おー、CLOS! なつかしー」と一人感激していた(おおげさ)。懇親会でたまたま臨席になったのでお話ししていたら、NTT時代に「Lispの神様」こと竹内郁雄さんのもとでLispを使っておられた、とか、GNU Emacsマニュアルの日本語訳に関わられた、とか、面白い話がいろいろ出てきた。共通の知り合いもいることが分かったし(rayちゃん、お元気そうでなにより)。
もう一人は小林龍生さん。かつて「XML開発者の日」なる濃いーイベントがあったが、そこでUnicode漫才をされてた方、と言えば、ピンと来る人にはピンと来るだろう。私もこういう認識である。ジャストシステム在籍時に共著でSIGDDで発表されてたのは知っていたが、こんな場でお会いできるとは。「XML開発者の日」の壇上におられた方は、自分にとってはある意味憧れで、機会があればお近づきになりたい人たちなのだ。村田真さん、川俣さん(xml-usersメーリングリストで私の「Data on the Web」翻訳を取り上げていただけた)、檜山さん(ブログにコメントさせていただいたっけなあ。松本吉弘先生の著書の話で盛り上がったような…)、細谷先生(後にXYZ研究会でお近づきになれた)、宮下尚さん(Meadowで名前は存じ上げていたけど、こんなところでお会いできるとは。やはり後にXYZ研究会でお近づきになれた)などなど。小林龍生さんもその一人だ。XML開発者の日の話を持ち出したら、照れておられたけど。
実際の小林さんは、どことなく技術者らしくない雰囲気を漂わせていらっしゃる方だった。懇親会の場での話題は、日本語の話を中心に、戦時中の戦艦の話まで多岐に及んだ。でも、技術の話にはあまりいかない。なんか、文系の研究者と話をしているような感じを受けた。「イチローがインタビューに必ず日本語で受け答えをするのはなぜだと思うか」「Google日本語入力は『みぞうゆう』と入力すると『未曾有』と返すけど、こういう日本語入力を留学生が使いたいと言ってきたらどうするか」なんていう問いかけをされてくるのだ。後者は、正しい日本語とは何か、という、非常に根源的な話なのだろうと思う。後者については「長く日本にいるつもりの留学生になら、勧めるかも」と答えたが、とても難しい。
「XML開発者の日」の昔話でも盛り上がったのだけど、小林さんはこのイベント(特に3回目あたりまで)のことを「皮膚がひりひりするような」と形容しておられた。私は2回目から参加した人なのだが、この形容を聞いて、なんと的確な表現をされる方なのだろう、と思った。プログラムだけを見れば、今流行りの勉強会と似ているのかもしれない。でも、実際は違っていた。XMLという期待の技術と、その裏にある、文書、文字、マークアップ言語、といった過去の「怨念」(と村田さんは形容されていたような)、銀の弾丸にはなり得ないというある種の諦念、そういうのが一緒くたになって、独特のエネルギーを持った場になっていたと思う。そして、その場にいる人は、背景の説明なしに発表を理解できる、つまり、同じ感覚を共有する人たちだった。それを一言で言いのける小林さんはすごいなあ、と思った。
機会と旅費があれば、SIGDDにはまた参加しよう。そして、懇親会でまた面白い話に加わらせていただくことにしよう。